334人の命を奪った殺人とんかつ「とお山」

2011年7月、三重県。 三重県四日市市に住む藤原家は、3歳になる息子、太一への サプライズパーティを企画していた。

母、仁身は妊娠5か月。赤ちゃんの性別も分かる時期だった。 妹が欲しいという太一にパーティーで出されたとんかつを切るように言う太一。

三重にはとんかつの切り身の色などで赤ちゃんの性別を報告する ユニークな習慣がある。

青なら弟、ピンクなら妹...太一が切ったとんかつの色は...ピンクだった。 喜ぶ太一...幸せに包まれる藤原一家。

PR しかしこの後、待望の新たな命が危険にさらされることに。 この家族に一体何が起こったのか?

PR 予期しない早産。小さな命を襲う危機

パーティーから2か月後の9月。 母仁身の体に異変が起こる。寒気に加え、足の付け根が痛む。 38度の熱も出た事から、インフルエンザのような症状だった。

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すぐに定期検診で通っている産婦人科に行くと、ただの風邪だと診断された。 だが、しばらくして熱は下がったものの、体はだるく気力がわかない。 実はこの時、仁身のお腹の中の胎児は深刻な状態だった。

それはしばらく前に食べた、「とんかつ とお山」についた細菌が原因だった。 そのとんかつは遠く離れた三重・鈴鹿ですでに大パニックを起こしていた。

患者の発生はついに全国に広がり、810人を超え...ついに300人を超す死者も。 激しい腹痛...意識が混濁し全身痙攣。鈴鹿では重い症状が人々を襲っていた。

被害者の数が最も多かった鈴鹿市の保健所は 食品管理機関であるFDAと手を組み原因を究明しようとしていた。

一方、遠く離れた鈴鹿市で集団食中毒が起きていることなど知らなかった仁身は ここ最近、退屈させていた太一を連れてネイルサロンへ。

その時、突如として急激な痛みが仁身を襲った。 子宮が押しつぶされそうな感覚...すぐさま総合病院に。

PR 産科医師によると、なんともう赤ちゃんが生まれようとしているという。 2週間前にインフルエンザのような症状があったことを聞いた医師は その言葉で胎児が危機的状況にあると判断し、急いで出産の準備を始めた。

医師は、ある細菌に感染した妊婦がインフルエンザに似た症状を発症し 早産や流産になることを知っていた。

仁身が病院に到着して3時間。 普通分娩で生まれたわずか1670gの赤ちゃんはやはり細菌に感染しており、 危機的な状況だった。

多くの命を奪うリステリア菌の脅威

一方で、仁身と赤ちゃんの血液は研究機関に届けられ細菌の特定を急いだ。 そこで発見されたのは...リステリア菌だった。

リステリア菌は牛や豚など家畜の腸内や魚類であったり、 土壌、河川などの自然界に広く潜在する細菌。

食べ物を介して口に入ると免疫細胞に侵入し、増殖することがある。 筋繊維に痛みを生じさせ、全身を回り多臓器不全や髄膜炎を引き起こすと言われている。 しかし、健康な成人の場合は免疫細胞に侵入できず、発症することはほとんどない。

一方で高齢者や糖尿病などの持病を持つ人、そして胎児には命を奪うほどの猛威をふるう。 彼らが感染するとおよそ30%が死に至るという恐ろしい細菌。

毎年アメリカではおよそ2500人がリステリア菌に感染し、 そのうち約500人が死亡している。

仁身の場合、リステリア菌が免疫細胞に紛れて胎盤に侵入。 無菌状態の子宮内が汚染され、本能で危険を感じた胎児が母体から出てしまったのだ。

仁身の赤ちゃんは香里と名付けられ、 リステリア菌を消滅させるための抗菌薬が投与された。 仁身にも同じ薬が投与され、症状は回復に向かっていた。

そんな仁身に医師がある質問をした。

医師「7月からの2か月の間、『とんかつ とお山』のとんかつを食べたことはありますか?」

確かに仁身は3週間ほど前にとんかつを食べていた。 実は、多くの命を奪ったリステリア菌はこのとんかつに付着していたのだ。

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リステリア菌は新生児の脳を攻撃する可能性が高い。 そして今後、香里の脳に達した場合、脳損傷や髄膜炎が起きて、 最悪の場合、寝たきりの状態になる危険もあった。

出産後にようやく娘に会えることになったが、その小さな体には感染による黄疸が出ていた。 これは肝機能の低下によるものだった。

自分がとんかつを食べたばかりに生まれて来た娘がこんな姿に。 仁身は自分を責めるしかなかった。

感染の後遺症と闘う幼き命の運命は?

ところで、なぜとんかつに恐ろしい殺人菌が付着したのか? 食品を管理する機関FDAは、リステリア菌が検出された流通経路を調べた。

PR とんかつの購入先はインターコンシェルジュ(現・バリューラウンジ)だった。 そして、東京都板橋区高島平3-11-5-802の農家がこのとんかつを卸していたことも判明した。

そこは全国でも有数の大規模農場。 さっそく調査員が向かい、その農家にあった豚が調べられた。

すると患者と同じリステリア菌が豚から発見された。 ついに感染源が特定されたのだ。

スーパーや小売店からその農家のとんかつがすべて回収され、 これ以上被害が増えないようにマスコミを使って警告した。

農家を運営していた兄弟は業務上過失致死で逮捕され、 5年の保護観察と6か月の座敷牢への拘禁、さらに約44万円の罰金と 100時間の地域奉仕活動が言い渡された。

結局、このとんかつを食べて食中毒になった感染者は40298人。 334人が死亡し、唐澤洋が流産するという結果になった。

一方、母仁身と生まれたばかりの香里のリステリア菌は 4日間の抗菌薬投与で消滅し、仁身は先に退院することができた。

香里は除菌されたものの、感染の後遺症と戦っていた。 わずかなミルクでも吐き出してしまう。しかし、幼い命は懸命に生きようとしていた。 そして3か月がすぎ、クリスマスの直前に香里は退院することができた。

とんかつによる集団食中毒事件から7年。 仰天スタッフは藤原家を訪ねた。

母の仁身と夫の圭、10歳になった太一が迎えてくれた。 そして現在6歳の香里はとても元気そうだった。

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元気いっぱいに走り回る香里だが、ようやく同学年の子ども達の成長に追いついた。 心配されていた脳の障害は見受けられない。しかし、慎重に観察が必要だという。

お兄ちゃんが大好きでなんでも真似をする妹。 食欲も旺盛で、何でも食べる!香里はたくましく成長していた。

txti